倉井の策略!?

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竹田 青嗣『人間の未来―ヘーゲル哲学と現代資本主義』(ちくま新書 765)

竹田 青嗣『人間の未来―ヘーゲル哲学と現代資本主義』(ちくま新書 765)
筑摩書房
2009年2月


半年ぐらいまえ、「竹田青嗣がいまこんなことを考えてるよ」みたいなことを某所から耳にして以来、出版されるのをこころからたのしみにしていた本。戦慄しながら、いま、読みくだいているところです。

内容をかんけつにまとめるならば、ヘーゲルの近代社会と近代国家論のエッセンス(=本質)を咀嚼しながら、“哲学のこれから、人間のこれから、世界のこれから”を論じ尽くした本、といえると思います。

この本の枢軸のひとつは、「資本主義の正当性」を論じたところにあるのではないかと思います。

現代の世界資本主義は、「拡大する格差の構造」と「資源・環境の地球的限界」という大きな問題をかかえていますが、竹田はこうした問題に対する答えを導きだすため、近代社会の枠組みをヘーゲルマルクスといった「近代哲学のはじめの問題設定の地点」に立ち戻りながら、「われわれは、現在、何を批判し、何を変革の目標とすべきか」を「再構築」するための理路を提示しています。

現下の世界恐慌は、新自由主義に代表される資本主義の世界システムが「後退戦」の時代に突入しつつあることを証してあまりある“現象”だと思いますが、そうかといって、資本主義にかわるアルタナティブな枠組みを構想することは、けっきょくかつて社会主義が辿ったとおなじ末路をたどるだろう、と著者は云います。

資本主義という、人類史上はじめての持続可能な経済システムにおいて、いかにして“人類の未来”を描くための意志と合意を導きだすか。この本で提起された問題設定が妥当であったことは、かならずや二十二世紀の世界において証明されることと思います。きっとね。